正解が2つあるとき、経営者は一番動けなくなる(連載「中小企業経営者の判断の瞬間」①)
- 新井 庸支

- 1月7日
- 読了時間: 4分
更新日:5 日前
「どちらも間違っていない」とき、経営の判断は止まりやすい
その経営者は、
「どちらも間違っていないんですよね」と言いながら、
同じところを何度も行き来していました。
A案も理解できる。
B案も筋は通っている。
数字を見ても、
どちらかが明確に優れているわけではない。
外から見れば、
「どちらか決めて進めばいいのでは」
と思える状況です。
でも、本人は動けない。
情報が揃っているのに決められない理由
こういう場面は、実はとても多いです。
経営判断が止まる場面の多くは、
情報不足ではなく、
「何を基準に決めるか」が言語化されていない状態です。
そして一番やっかいなのは、
情報が足りないからではないという点です。
むしろ逆で、
情報は揃っている
選択肢も整理されている
リスクも把握している
それでも決められない。
このとき、経営者の頭の中では、
「正解を選ぶ」話と
「失敗を避ける」話が、
ごちゃっと混ざっています。
比較しているのは「案」ではなく「失敗した後の自分」
この方の場合もそうでした。
私自身、
これまで中小企業の経営者と向き合う中で、
同じ構造を何度も見てきました。
話を聞いていると、
売上や利益の話をしているようで、
実際にはずっと、
「もし失敗したらどう見られるか」
「これまで積み上げてきたものが無駄にならないか」
という話に戻ってくる。
つまり、
比較しているのは案ではなく、
“失敗した後の自分”だったんですね。
ここを切り分けない限り、
どれだけAとBを比べても、
判断は前に進みません。
これは「最適解探し」ではなく「判断基準を決める」話
この場面でやるべきことは、
「より正しい案を選ぶ」ことではありません。
一度、こう整理します。
これは「最適解」を探す話なのか
それとも「受け入れられる失敗」を決める話なのか
多くの場合、後者です。
完璧な正解がないとき、
人は無意識に
「失敗しない選択」を探し始めます。
でも経営では、
失敗しない選択肢がないという状況も、普通に起こります。
「どこまでなら引き受けられるか」が決まると、判断は動く
この方に投げたのは、
とてもシンプルな一言です。
「もし、うまくいかなかったとして、 どこまでなら“まあ仕方ない”と思えますか?」
しばらく沈黙があって、
ぽつりと、こう返ってきました。
「…このくらいなら、 自分で責任を取れます」
その瞬間、比較の軸が変わりました。
AとBの優劣ではなく、
「どちらの失敗なら、自分は引き受けられるか」。
そこが定まると、
判断は不思議と動き始めます。
正解が2つあるときほど、判断の軸が必要になる
判断が動き出すのは、
正解が見えた瞬間ではなく、
「この基準なら決めていい」と自分で納得できたときです。
判断が前に進むときは、
答えが見えた瞬間ではありません。
「これなら決めてもいい」と、
腹が決まった瞬間です。
正解が2つあるときほど、
経営者は一人で抱え込みがちです。
もし、同じところを行き来している感覚があるなら、
それは能力や準備の問題ではありません。
判断の“軸”が、まだ言葉になっていないだけです。
判断の整理から始めるという選択
判断に迷う場面は、
一人で考え続けるほど、かえって動けなくなることがあります。
もし、整理する相手が必要なときは、
初回の整理セッションをご用意しています。
(無理に答えを出す場ではありません)
※この記事は、
中小企業の経営判断を支援する
株式会社ホワイトナイト 代表・新井 庸支が、
実際の相談現場で感じた「判断の瞬間」をもとに執筆しています。

新井 庸支
株式会社ホワイトナイト 代表取締役
中小企業の経営判断を支援するコンサルタント。
戦略立案や施策提案そのものよりも、経営者の判断が止まっている論点を整理し、「何を決める話なのか」を明確にする支援を行っている。
これまで、地域企業・中小企業を中心に経営・マーケティング・新規事業・組織づくりなど、多様な相談に伴走。
答えを押し付けるのではなく、経営者自身が納得して決断できる状態をつくることを重視し、「迷いを構造に変える」関わり方を続けている。
現在は、
判断が止まっている状態を言葉にするための、
初回の整理セッション(オンライン/60分)を中心に関わっている。
▶︎ プロフィール詳細https://www.whiteknight-jp.com/ceoprofile


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