判断の瞬間③「やらない理由」を並べ始めたら、判断は止まっている
- 新井 庸支

- 1 日前
- 読了時間: 4分
その場に出てきた資料は、
どれもよくできていました。
数字も揃っている。
リスクも洗い出されている。
外から見れば、「十分に検討している」状態です。
それでも、話は前に進まない。
理由を聞くと、こんな言葉が並びます。
市場環境がまだ不透明で
人材が十分に揃っていなくて
今はタイミングではない気がして
資金面の不安もゼロではなくて
どれも、間違っていません。
むしろ、
経営者として正しい判断材料です。
それでも、違和感が残る。
この場面で起きているのは、
「検討」ではなく、
判断が止まっている状態です。
本人も、
そのことにうっすら気づいています。
でも、
「やらない理由」を言葉にすればするほど、
自分を納得させられる気がする。
結果として、
判断はその場に留まり続けます。
ここで一度、
立ち止まって整理します。
ロジックやデータは、
本来「判断するため」に使うものです。
ところがこの場面では、
それらが
「判断を先延ばしするため」に
使われ始めています。
これは、
珍しいことではありません。
判断するという行為には、
必ず責任が伴います。
だから人は、
無意識のうちに
「まだ決めなくていい理由」を
積み上げてしまう。
ロジックは、
そのためのとても優秀な道具でもあるのです。
話を聞いていると、
その方の説明は
どんどん整っていきました。
資料も増え、
理由も明確になり、
反対意見への備えも万全。
それでも、
結論は出てこない。
この状態で必要なのは、
新しいデータでも、
別の正解でもありません。
視点を、少しだけずらします。
この場面で投げた問いは、
とても単純なものでした。
「今、決めないことで 何を守ろうとしていますか?」
少し沈黙があって、
こう返ってきました。
「…失敗した自分を、ですかね」
その瞬間、
空気が変わりました。
それまで並んでいた“やらない理由”は、
間違いではなかった。
ただ、
本当の理由を覆うために
使われていただけ
だったのです。
やらない理由が
きれいに揃い始めたとき、
判断はすでに「検討」ではなく
先延ばしのフェーズに入っていることが多いです。
これは、
能力の問題ではありません。
むしろ、
真剣に考えているからこそ、
起きやすい状態です。
判断とは、
論理だけで完結するものではありません。
どこかで必ず、
「引き受ける」という決断が
必要になります。
失敗するかもしれない
期待通りにいかないかもしれない
それでも進む
この部分だけは、
データでは代替できません。
だからこそ、
ロジックが整いすぎたときほど、
判断は止まりやすくなります。
判断が前に進むときは、
「十分に検討できたから」
ではありません。
「この結果なら、引き受けられる」と
腹が決まったときです。
理由がなくなるからではなく、
理由があっても進むと決めたときに、
判断は動き出します。
もし今、
やらない理由を何度も説明している自分に気づいたら、
一度立ち止まってみてください。
それは慎重さではなく、
判断が重くなっているサインかもしれません。
判断を軽くするために、
新しい正解は必要ありません。
必要なのは、
「何を守ろうとしているのか」を
言葉にすることだけです。
判断に迷う場面は、
一人で考え続けるほど、
かえって複雑になります。
もし、
理由は揃っているのに決められない、
そんな状態が続いているなら、
一度、
判断そのものを整理する時間を
持ってもいいかもしれません。
▶︎ 初回の整理セッション
※この記事は、
中小企業の経営判断を支援する
株式会社ホワイトナイト 代表・新井 庸支が、
実際の相談現場で感じた「判断の瞬間」をもとに執筆しています。

新井 庸支
株式会社ホワイトナイト 代表取締役
中小企業の経営判断を支援するコンサルタント。
戦略立案や施策提案そのものよりも、
経営者の判断が止まっている論点を整理し、
「何を決める話なのか」を
明確にする支援を行っている。
これまで、
地域企業・中小企業を中心に
経営・マーケティング・新規事業・組織づくりなど、
多様な相談に伴走。
答えを押し付けるのではなく、
経営者自身が納得して
決断できる状態をつくることを重視し、
「迷いを構造に変える」関わり方を続けている。
現在は、
判断が止まっている状態を言葉にするための、
初回の整理セッション(オンライン/60分)を中心に関わっている。
▶︎ プロフィール詳細https://www.whiteknight-jp.com/ceoprofile


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