社員には言い切ったはずなのに「これで良かったのか」が残るとき(連載「中小企業経営者の判断の瞬間」⑧)
- 新井 庸支

- 1月26日
- 読了時間: 4分
その方は、地方で食品メーカーを営む、2代目の社長でした。
社員数は数十名。
地元では知られた存在で、取引先との関係も長い。
事業としては、大きな失敗があるわけではありません。
ただ、
ある判断をしたあと、
少しだけ言葉を選ぶようになっていました。
社員には、この話は伝えました。
未来に向けた新しい取り組みやそれに伴う組織体制の見直しについても、
社内では伝えています。
「この方向でやりましょう」
会議も終わっている。
現場も、少しずつ動き始めている。
リーダーとしての言動には、
何も問題ありません。
それでも、
話を聞いていると、
経営者からは、こんな言葉が出てきました。
「夜になると、ふと考えてしまうんです」
「社員には言い切っているんですが……」
そう前置きした上で、彼は続けました。
「これで本当に良かったのか、夜になると、ふと考えてしまうことがあって」
ただ、判断を出した“その後”に、
自分の中で確認が終わっていない。
そんな状態でした。
それは、会社や社員への責任を感じているからこその感覚であり、
優柔不断ではありません。
判断間違いでも、弱いわけでもありません。
むしろ逆です。
社員の前では、社長として言い切る。
不安を見せない。組織を前に進める。
その役割を、きちんと引き受けているからこそ、
一人になったときに、自分に問いが戻ってくる。
これは、
2代目・3代目の経営者ほど、よく起きることです。
先代から引き継いで、これで良いのだろうかと言う気持ち。
ここは継承すべきだが、ここは未来に向けて変えなければという思い。
社員からどう思われるだろうかという思い。
結果を出さなければという責任感の重さ。
経営者の判断は、一度で終わらない
経営判断というのは、
決める
伝える
動かす
ここで終わりではありません。
動き出したあとに、
見えてくるもの
想定と違った部分
想像以上に重かった責任
が、必ず出てきます。
そのときに起きる「これで良かったのか」という自問は、
事前整理が足りなかったから、とは限りません。
判断という行為そのものが、
あとから問いを連れてくるのです。
事前の整理は、確かに大切です
もちろん、
論点を整理する
判断材料を揃える
選択肢を見極める
これは、欠かせません。
私自身、その部分をお手伝いすることも多いです。
ただ、
どれだけ整理しても、
判断を出したあとに自分自身と向き合う時間は残ります。
だからこそ、「後から確認できる」相手がいる
この社長には、こうお話ししました。
「判断は、一回で完結しなくていいんです」
「出したあとに、もう一度立ち返って確認する。それでいいのです」
大事なのは、
その確認を、一人で抱え続けないこと。
正解を出すためではなく、
判断を引き受け直すための相手がいる。
それが、
経営者にとっての伴走のパートナーだと思っています。
それは、指示を出す存在でも、答えを決める存在でもありません。
判断を整理する、という関わり方
判断の整理は、
決める前だけではありません。
決めたあと
動き出したあと
違和感が出てきたとき
にも、意味があります。
「これで良かったのか」と思ったとき、
立ち返れる場所がある。
それだけで、
経営者は、もう一度前を向けることも少なくありません。
一人で引き受け続けなくていい
もし今、
社員には言い切った
組織も動いている
それでも、心のどこかで考え続けている
そんな状態があるなら、
それは、弱さではありません。
経営者として、きちんと引き受けている証拠です。
判断を一人で抱え続ける必要はありません。
▶︎ 初回の整理セッション
経営・マーケティング判断のための「整理と設計」(オンライン/60分)
※このセッションは、答えを出す場ではありません。
判断を、もう一度整理し直すための時間です。
※この記事は、中小企業の経営判断を支援する
株式会社ホワイトナイト 代表・新井 庸支が、
実際の相談現場で感じた「判断の瞬間」をもとに執筆しています。

新井 庸支
株式会社ホワイトナイト 代表取締役
中小企業の経営判断を支援するコンサルタント。
戦略立案や施策提案そのものよりも、
経営者の判断が止まっている論点を整理し、
「何を決める話なのか」を
明確にする支援を行っている。
これまで、
地域企業・中小企業を中心に
経営・マーケティング・新規事業・組織づくりなど、
多様な相談に伴走。
答えを押し付けるのではなく、
経営者自身が納得して
決断できる状態をつくることを重視し、
「迷いを構造に変える」関わり方を続けている。
現在は、
判断が止まっている状態を言葉にするための、
経営・マーケティング判断のための「整理と設計」(オンライン/60分)
を中心に関わっている。
▶︎ プロフィール詳細https://www.whiteknight-jp.com/ceoprofile

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