後継者育成5年計画の立て方──“承継”は時間をかけて磨き上げる<事業承継ブログ 第2回>
- 新井 庸支

- 10月15日
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日本の地方では、経営者の高齢化とともに「後継者育成」が深刻な課題となっています。 後継者は社長交代の瞬間に育つのではなく、長い時間をかけて「次の経営者」としての資質を育てていく必要があります。 私自身、事業承継の現場に携わる中で、後継者育成には少なくとも5年ほどの時間軸が必要だと強く感じています。
1. なぜ5年計画が必要なのか
事業承継は、単なる「権限移譲」ではなく「経営の継承」です。 つまり、会社のビジョン・価値観・判断軸を後継者が体得する時間が必要になります。 特に地方の中小企業では、経営者と社員・取引先の信頼関係が非常に強く、「経営者=企業そのもの」というケースが少なくありません。 この関係性を一朝一夕で引き継ぐのは不可能です。だからこそ、早期から育成計画を立てることが重要になります。
2. 後継者育成の5年間ステップ
年 | フェーズ | 目的 | 主な内容 |
1年目 | 現場理解 | 組織を肌で知る | 現場業務・社員・顧客理解を徹底 |
2年目 | 管理職経験 | リーダーとしての自覚 | 部署責任者として意思決定に参加 |
3年目 | 経営参加 | 経営者の視点を持つ | 経営会議に出席・計画策定に参加 |
4年目 | 経営執行 | 実行と成果責任 | 事業部やプロジェクトの責任を担う |
5年目 | 承継 | トップとしての覚悟 | 代表交代・ビジョン共有 |
3. 信頼を育てるのは「肩書き」ではない
後継者育成の最大のポイントは、「社内外の信頼を育てる」ことです。 社員・顧客・取引先が安心して後継者を受け入れるためには、「人間としての信用」「経営者としての判断力」が必要です。 ここを飛ばして“形式的な社長交代”をすると、承継後に社内が混乱するケースが非常に多く見られます。
4. 外部研修・異業種経験を積ませる
経営者は社内だけで育つものではありません。 地方企業では特に「井の中の蛙」になりやすく、視野が狭くなることがあります。 社外研修や異業種交流、MBA・リーダーシップ研修などを積極的に活用し、経営者としての視座を高めることが重要です。
5. 育成は“経営者の仕事”
後継者育成は、経営者自身が最も時間をかけるべき経営課題です。 早期から準備を進めることで、承継は「慌てて譲る」ではなく「安心して託す」プロセスに変わります。 事業承継は、会社の未来を預ける経営判断です。だからこそ、時間を味方につけましょう。
株式会社ホワイトナイト
コンサルタント(事業承継アドバイザー資格保有者)
新井 庸支


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