高市総裁就任が映し出す「メディアの転換点」——人々と情報の関係が変わる時代
- 新井 庸支

- 10月16日
- 読了時間: 4分

2025年10月、高市早苗氏が自由民主党の総裁に就任しました。この出来事は、単なる政治ニュースではなく、「情報の伝わり方」そのものの大きな変化を象徴する出来事です。
新聞やテレビといった“オールドメディア”を経由せず、SNSを通じて政治家自身が国民に語りかける姿が、いま多くの人のタイムラインに流れています。そして、この変化は政治だけの話ではなく、私たち一人ひとりとメディアの関係を根底から変えようとしています。
SNSで「全文を」伝えるという転換
自民党公式Xアカウント(@jimin_koho)は、就任直後からぶら下がり取材の内容をそのまま全文でSNSに投稿し始めました。
かつてはテレビや新聞が情報の“ゲートキーパー”として、ニュース性があると判断した部分だけを編集し、世の中に届けていました。しかし今は、発信者が自ら情報を公開し、人々はその一次情報に直接触れることができるようになっています。
これは政治分野に限らず、企業・著名人・団体などあらゆる領域で進んでいる構造変化です。
フォロワー急増が示す「人々の行動の変化」
高市総裁本人のXアカウント(@takaichi_sanae)は、就任後に毎日1万人以上のフォロワーが増加し、10月15日時点で155万人を突破しました。この急増は人気投票的な数字というよりも、「報道を待たずに本人の声を聞きたい」という人々の選択を反映しています。
情報の主導権が、メディア側から受け手の側に移っている。これは企業広報やブランドコミュニケーションにも通じる非常に大きなトレンドです。
「切り取り」から「原文」へ——メディアの役割が変わる
新聞やテレビの報道は、情報を取捨選択して伝えるという性質上、どうしても「切り取り」が起こります。時に発言の文脈が失われ、本来の意図と異なった形で情報が拡散することも少なくありませんでした。
一方でSNSでは、発信者がそのままの言葉を伝えることができます。つまり、メディアの役割は「情報を伝える」から「情報を読み解く」へと変化しているのです。
情報を一方的に“届けられる”時代から、自分で“取りに行く”時代へ。この構造変化は、すべての業界に波及する可能性があります。
歴史は繰り返す——田中角栄とテレビの時代
これは初めての変化ではありません。1970年代、当時の首相・田中角栄は新聞報道への不信感から
「新聞は自分を悪く書く。テレビなら自分の生の声を国民に伝えられる」
と語り、テレビを通じた“直接発信”を重視しました。それまで新聞中心だった政治報道の構造は、ここで「テレビ」という新しいメディアに移行します。
そして今、同じような構造転換が「テレビ → SNS」という形で進行しているのです。
情報の見方が変わるのは「人々の側」
今回の変化で本質的に重要なのは、政治家ではなく「受け手=人々」の側です。これまで「メディアが伝える情報を受け取る」立場だった人々が、いまはSNS上で一次情報に直接アクセスし、自ら解釈・拡散する側になっています。
つまり、「発信の民主化」だけでなく「解釈の民主化」も進んでいるのです。この流れは政治だけでなく、企業、自治体、NPO、個人の発信にも影響します。
マーケティングの観点から見えること
マーケティングの世界でも、ブランドや企業が広告や報道に頼らず、自ら語る時代が加速しています。いまや「どうメディアに取り上げられるか」ではなく、「どう自分で語るか」「どう人々に届くか」がカギになっています。
情報の即時性
発信の正確性(編集リスクの低減)
受け手との直接的な関係構築
これらはまさにSNS時代の本質であり、マーケティング戦略にも直結します。
おわりに——「メディアと人」の関係が変わる時代へ
新聞からテレビへ。そしてテレビからSNSへ。
情報の発信と受信の構造は、メディアの進化とともに大きく変化してきました。2025年のこの動きは、政治の世界に限らず、「人々とメディアの関係」が変わった転換点として記録されるかもしれません。
これからの時代は、「どのメディアを見るか」ではなく、「誰の言葉を、どのように受け取るか」が問われます。
マーケティングに携わる人たちも、この流れを読み解き、戦略を変える必要があるでしょう。



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