中小企業が成長するときに、必ず立ち返るべき「ペルソナ」の話
- 新井 庸支

- 2025年12月23日
- 読了時間: 5分
経営やマーケティングの現場において、ペルソナ設定はとても大事です。
これは、私がコンサルタントとして企業支援を行う中で、必ずお伝えしている基本の考え方でもあります。
一方で、セミナーや研修の場で受講者の方に「ペルソナについてどう理解していますか?」と質問をすると、
言葉は聞いたことがある
重要だとは思っている
ただ、正直なところよくわかっていない
という反応も、決して少なくありません。
そこで本記事では、あくまで基礎的な内容に絞り、できるだけシンプルに「なぜペルソナが重要なのか」「中小企業でよく起きているズレ」について整理していきます。
難しい理論やフレームワークではなく、実際の現場で起きていることをベースにした話として、読み進めていただければと思います。
「誰にでも売れる」は、誰にも強く刺さらない
まず、とてもシンプルな話から始めます。
ある商品Aがあるとします。この商品は、Bさんにとってはとても魅力的ですが、Cさんにとっては、まったく魅力を感じない。
これは何もおかしなことではありません。商品やサービスの価値は、「誰が受け取るか」によって大きく変わるからです。
にもかかわらず、
幅広く売りたい
機会損失を避けたい
特定の層に絞るのが怖い
こうした理由から、「誰にでも当てはまる説明」になってしまう企業は少なくありません。
結果として、
特別感が伝わらない
価格で比較されやすくなる
営業やPRの言葉が弱くなる
といった状態に陥ります。
中小企業ほど「既存顧客基準」になりやすい
私はこれまで、全国各地で中小企業の経営・マーケティング支援を行ってきました。
その中で特に多く感じるのが、
今のお客様が買ってくれているから今のお客様を基準に考えてしまう
というケースです。
特に地方企業の場合、
地元企業
長年の取引先
顔の見える関係
こうした土台があるため、商品Aは「普通に説明すれば買ってもらえる」ことが多い。
これは決して悪いことではありません。企業としての信用力でもあります。
ただし、ここに一つ、見落とされがちなポイントがあります。
実は「もっと強く刺さる相手」がいるかもしれない
地元や既存顧客にとっては「普通に良い商品」だったとしても、別の誰かにとっては強い魅力を持つ商品である可能性があります。
飲食店の例で考えてみましょう
地元で愛されている飲食店。料理は美味しく、メニューも豊富。
地元の方にとっては「いつもの美味しいお店」です。
では、その地域が観光地だったらどうでしょうか。
観光客にとって重要なのは、
その土地らしさが感じられるか
ここでしか食べられないものがあるか
という点です。
この場合、
メニューが多いことよりも
地域食材を使った看板商品があること
の方が、魅力として伝わりやすくなります。
さらに、その看板商品が人気になれば、
お土産商品
EC販売
ふるさと納税返礼品
といった形で、新たな事業の軸に発展する可能性も出てきます。
BtoBでも同じことが起きている
これはBtoCに限った話ではありません。
たとえば製造業の会社で、
地元企業との取引が中心
価格と納期が重視される世界
に長く身を置いていると、
高品質
丁寧な加工
小回りの利く対応
といった強みが「当たり前」になりがちです。
しかし視点を変えて、
試作や開発を繰り返す企業
少量・短納期を求める研究用途
外注先選びに慎重なスタートアップ
といったペルソナで考えるとどうでしょうか。
同じ強みが、
「安心して相談できる加工パートナー」
「開発段階から並走してくれる存在」
という、まったく違う価値として伝わります。
結果として、
価格競争から抜け出しやすくなる
相談ベースの案件が増える
継続取引につながりやすくなる
といった変化が起きます。
中小企業が成長するとき、まず考えたいこと
新しい施策を打つ前に。広告を出す前に。営業資料を作る前に。
一度、立ち止まって考えてみてください。
この商品・サービスは
誰にとって一番強く刺さるのか
なぜその人にとって必要なのか
ペルソナを明確にすることは、「顧客を減らすこと」ではありません。
むしろ、
伝える言葉が明確になる
選ばれる理由がはっきりする
結果として商圏や事業が広がる
ための出発点です。
コンサルタントとして、最後に一言
ここまでお伝えしてきた内容は、決して特別なノウハウではありません。
むしろ、経営やマーケティングの基礎です。
ただ、全国各地で中小企業の支援に携わる中で感じるのは、この「基礎」が、日々の忙しさの中でいつの間にか曖昧になってしまっているケースが少なくないということです。
商品やサービスが悪いわけではない。現場も真面目に取り組んでいる。それでも伸び悩むとき、多くの場合は、
誰に向けた商品なのか
誰に一番届けたいのか
この整理が十分でなく、言葉になっていません。
中小企業が次の成長段階に進むとき、大きな投資や派手な施策よりも先に、一度立ち止まってペルソナを考え直す。
その積み重ねが、伝わり方を変え、選ばれ方を変え、結果として事業の広がりにつながっていきます。
コンサルタントとして多くの現場を見てきた立場から、あらためて強く感じていることです。

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本記事は、中小企業の経営・マーケティング支援に携わる立場から、
日々の現場で感じていることをまとめたものです。
株式会社ホワイトナイト
代表取締役 新井 庸支


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